パブコメ募集:局免のスキャン保存

『電波法施行規則の一部を改正する省令案等に係る意見募集
 -無線局免許状等のスキャナ保存に係る制度整備-』
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000459.html

「紙で届いた局免を,スキャンして持っていていいよ」というものです.
ですので,将来にむけて検討が進んでいる,局免そのものの電子交付のうごき――FCC流のやりかた――の件ではありません.


影響の想定――良くも悪くもナシ

我々アマチュアにはまったく影響がなさそう:
(1) そもそも,移動先に局免を携帯していく義務はなくなっている*
(2) スキャンなどせずとも,常置場所に局免の原紙を置いている方がほとんどであろう.
(3) スキャンしても局免は捨てられない

*:自衛的に局免のイメージをスマホでお持ち歩きになっている方もおいでかもしれません.
今回,それが公認される形になります...常置場所で

:免許状の返納の規程〔法24条〕は,今回不変.



絵解き

要点を辿るとこうなります.
いつものおやくそく:法~省令~告示と,“縦”にたどると判りやすいと思います.
透明感あふれる施行規則38条の2――図中では38-2条と略記――なんかが好例でしょう:
法:「省令に書いとくね」
省令:「告示に書いとくね」
...スルーかい.
20230128scheme.jpg
施行規則の38条1項では,以下の無線局ごとに業務書類を定めています.
図では,「一」(「五」から参照されている)と「五」だけを抜粋しています.
一 船舶局及び船舶地球局
二 海岸局及び海岸地球局
三 航空機局及び航空機地球局(航空機の安全運航又は正常運航に関する通信を行うものに限る。)
四 航空局及び航空地球局(航空機の安全運航又は正常運航に関する通信を行うものに限る。)
五 アマチュア局
六 陸上移動局、携帯局、航空機地球局(三の項に掲げる航空機地球局を除く。)、携帯移動地球局、簡易無線局及び構内無線局
七 基幹放送局
八 遭難自動通報局、船上通信局、無線航行移動局及び無線標定移動局
九 その他の無線局

同4項の新規追加が,もっとも大きな改正点です:
4 第一項の規定による無線局(船舶局、無線航行移動局及び船舶地球局を除く。)の免許状の備付けは、当該免許状をスキャナにより読み取る方法その他これに類する方法により作成した電磁的記録をその写しとし、当該写しを無線局(前項に規定する場合にあつては、その無線設備の常置場所)に備え付けた電子計算機その他の機器に必要に応じ直ちに表示させることをもつてこれに代えることができる




絵解き【超訳】

さすがに6ポイントの上図は細かすぎるので,ひらたく超訳しました(12ポイント).
こんなかんじ:
20230128scheme-ez.jpg



きっかけ

これまた内閣府から逓信省へのガイアツです.
ただしアマチュアからではなく,産業界からの要望です.
例:「いちいち工場の高周波利用設備に紙の許可状ぶら下げて回ってられっかワレ!」

『第3回 デジタル基盤ワーキング・グループ 議事次第』
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2201_05digital/220329/digital03_agenda.html

の,とくに以下あたりを:

●資料3
電波法に基づき交付される届出・申請の免許状・許可状の電子化および電子保管の容認(一般社団法人日本経済団体連合会 御提出資料)

●資料5
規制改革ホットラインの処理方針(事務局 提出資料)


昨年のゲストオペの新告示〔R4告示330,プロ局のほう〕の際に,寄せられたパブコメに沿って「『無線局運用証明書』をやめた」流れに近いです.
「いちいち紙で様式用意するのたいへんなんよ;コンピュータで管理して,それを見せるだけでいいじゃん」.



長期的には

前項のチクリもあって(?),電子交付化ですね,FCC流の:
なお、令和7年1月に、総合無線局監理システム(電子申請・届出システム等)の更改によって無線局免許状の電子化を予定しており、これにより電子免許状の交付にあたっては送付に要する費用が不要となります。
〔規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)
 https://www.gyoukaku.go.jp/hotline/index.html
 の
 資料2 検討要請に対する所管省庁からの回答
 の
 行政改革 令和4年度 回答
 の
 番号106〕


参考URL:
『令和7年1月から「無線局免許が電子化」決定か!?』
https://www.freeradio.jp/?p=11276



W国では

2015年から交付自体が電子化(PDF化)されています.
ゆめゆめ「紙で送るからSASE送れ・スキャンしたかったら勝手にせい」ではなくて.
JA国から10年先行ですね.
最低$304,000/年の経費節減――でした(4,256万円/年).

時期内容
2015-02-17電子化.
"Official copy"**が欲しい人は自分でWebからダウンロード.
紙で欲しい人はrequest.
2020-12-30「紙でくださいrequest」も受付停止.完全電子化.

**:正本は電子データそのものなので,打ち出したものはあくまでcopyの位置づけです.

みほん:
20230127wa5ps.jpg

参考URL:
『FCC "Paperless" Amateur Radio License Policy Goes into Effect on February 17』
http://www.arrl.org/news/fcc-paperless-amateur-radio-license-policy-goes-into-effect-on-february-17

『How to Obtain an Official FCC License Copy』
http://www.arrl.org/obtain-license-copy



緩和の振り返り

亀のあゆみではありますが,JA国でも緩和方向ではあります.
こんなかんじ↓かな.
いまや「時計」も「ログ」も「抄録」も,備え付けは不要に:
20230128scan-history.jpg

参考URL――細かすぎるのでクリック禁止:
『「備付けを要する業務書類」の変遷』
https://jj1wtl.seesaa.net/article/201804article_11.html

この記事へのコメント

2023年02月16日 07:59
備え付け書類の件、アマチュアだけではなく船舶・航空関係以外の他業務局も全般的に緩和されてるんですよね。当方は本業で登録検査等事業者の仕事やってるんですが、毎回悩まされます(苦笑)。多くは申請の添付書類(事項書・工事設計書)の写しが見つからないっていうものですが、時に内々の規定で昔の名残りがあって、やれ業務日誌だ法令集だと騒ぐことになったことが何度もあります。
さて、件の規定がここまで緩和されると、いよいよJARL販売品のライセンスホルダーの存在意義がますます問われることに…(苦笑)