WRC-23速報:1200MHz脚注,文面判明

RR(無線通信規則)に追加されることになる「脚注」がわかりました.
以下,それを含め――

『WRC-23: Week-3 Update – 23cm and WPT』
https://rsgb.org/main/blog/front-page-news/2023/12/10/wrc-23-week-3-update-23cm-wpt/

――の全訳です.


元記事のあらまし

23cm

こんなかんじでしょうか:
  • 主管庁≒総務省は,「アマチュアから『みちびき』が妨害されないこと」を“保証” しろ.
    その際のガイダンスがM.2164だ.
  • 『みちびき』のユーザから,「アマチュアからの妨害 受けてるんですけど...」と訴えが出たら,...けっこう死亡フラグ.


所感:
  • 悲観的には …
    他に類を見ないほど律儀な主管庁様*ですので,一気に“特小化”に走る?
    *:世界で唯一(たぶん)の,WRC-03でのスプリアス規程の改正に則った確認保証をお求めになるとか.)
  • 楽観的には …
    「実害が出てから」動き始める?


WPT: Wireless Power Transmission

次々回WRC-31での議題化をねらってきています.
日本がビデオプロモーションをしたよう.



全訳

WRC-23:第3週アップデート – 23cm と WPT

WRC-23 世界無線通信会議の第3週の終わりに,1240~1300MHzの23cmアマチュアバンドに対する新しい脚注が全体[会合で]採択された.
これは,4年間の努力の末の大きな画期的なランドマークだ.
一方,「40~50MHzのレーダーサウンダー」と「将来の議題」については,すべての週と週末を通して,かなりの時間と労力を費やしている.

23cmに関しては,いずれにせよアマチュアが二次[分配]であるが,分配への脚注の全文は以下のとおり:
5.A91B: 周波数帯域1240~1300MHzまたはその一部におけるアマチュアおよびアマチュア衛星業務の運用を認可する主管庁は,
No. 5.29に従って,アマチュアおよびアマチュア衛星業務が無線航行衛星業務(宇宙から地球)の受信機に,有害な干渉を引き起こさないことを保証しなければならない(ITU-R勧告M.2164の最新版を参照).
認可した主管庁は、アマチュアまたはアマチュア衛星業務の局によって引き起こされた有害な干渉の報告を受け取った場合,当該干渉を迅速に排除するために必要なすべての措置を講じるものとする. (WRC-23)


正式には,これは2025年1月1日(脚注5.A91Bの参照が更新される) まで発効しないが,EUの後押しによりCEPTがより早く動くかもしれない.
RSGBは,他の一次利用者による変更も23cmの最終形に影響を与える可能性があることを認識している.
これに関するIARUニュースの全文はここにある:-

> IARU – 23cm news release
> IARU – 23cm report – by Barry G4SJH

将来の議題―― WPT
あまり歓迎されない[この]将来への提案の一つは,日本が午後の休憩をスポンサした水曜日に,派手なビデオプロモーションを行った.
ワイヤレス電力伝送(WPT)は,無線通信規則においての,さらなる認知を求めている.
二つの趣向がある:-

> 非ビーム – 基本的に,近接場誘導結合
> ビーム – より高い周波数で長距離(遠方界)

現在もっとも一般的な例は,かなり低電力の,ワイヤレススマートフォン充電器だ.
ただし,他の事例ではキロワットまたはそれ以上になる.
「ビーム」のコンセプトには,「離れた場所からのラップトップの充電」や,「宇宙基地での太陽光発電」が含まれる.
現在,WRC-31にむけて提案されている.
重大な干渉を引き起こしうる,この本質的に非効率な技術に対して,以下のスクリーンショットのように,いくつかの突飛な主張がなされていた.
[「WPTで電力消費を26%削減」というスクリーンショット]

CEPTはさらに詳細な第3週の進捗レポートを発表した.

IARUチームは,将来の会議にむけた議題の作成を含む,WRCの他の問題についても引き続き取り組んでいる.
RSGBの特別フォーカスページで,定期的な更新と追加の詳細を提供する.



1200MHz 補

「No. 5.29」とは

RRでの,「二次業務は一次業務を妨害してはいけません」という,しごくあたりまえの規程の部分です.
5.28 3) Stations of a secondary service:

5.29 a) shall not cause harmful interference to stations of primary services to which frequencies are already assigned or to which frequencies may be assigned at a later date;

5.30 b) cannot claim protection from harmful interference from stations of a primary service to which frequencies are already assigned or may be assigned at a later date;

5.31 c) can claim protection, however, from harmful interference from stations of the same or other secondary service(s) to which frequencies may be assigned at a later date.


「M.2164」とは

ガイダンスを定めた勧告です.

M.2164-0
『Guidance on technical and operational measures for the use of the frequency band 1 240-1 300 MHz by the amateur and amateur-satellite service in order to protect the radionavigation-satellite service (space-to-Earth)』

『無線航行衛星業務(宇宙から地球)を保護するための、アマチュアおよびアマチュア衛星業務による周波数帯1240~1300MHzの使用に関する、技術的および運用上の措置に関するガイダンス』

https://www.iaru-r1.org/wp-content/uploads/2023/11/R-REC-M.2164-0-202311-IPDF-E.pdf

要点部分――付属書――の和訳:
https://jj1wtl.seesaa.net/article/501522199.html



周波数割当計画の 今後の 全貌(想像)

前の記事でも触れたとおり,現状,『周波数割当計画』の「1240-1300MHz」部分の記述(国際分配)は,以下のようになっています〔電波利用ホームページ〕.
Reg. I~IIIで共通です.
「下線」は二次業務です.
ここに「脚注 5.A91B」が追加されることになります.仮置きしてみましょう:

地球探査衛星(能動)
無線標定

無線航行衛星(宇宙から地球)
5.328B 5.329 5.329A

無線航行衛星(宇宙から宇宙)
5.328B 5.329 5.329A

宇宙研究(能動)

アマチュア
5.282 5.330 5.331 5.332 5.335 5.335A 5.A91B


5.282

 435-438MHz、1260-1270MHz、2400-2450MHz、3400-3410MHz(第二地域及び第三地域に限る。)及び5650-5670MHzの周波数帯においては、アマチュア衛星業務は、分配表(無線通信規則第5.43号参照)に従って運用する他の業務に有害な混信を生じさせないことを条件として、使用することができる。
この使用を許可する主管庁は、アマチュア衛星業務の局の発射によって生ずるいかなる有害な混信も無線通信規則第25.11号の規定に従って直ちに除去することを確保する。
アマチュア衛星業務による1260-1270MHz及び5650-5670MHzの周波数帯の使用は、地球から宇宙への方向に限る。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.282

5.330

 付加分配:アンゴラ、サウジアラビア、バーレーン、バングラデシュ、カメルーン、中華人民共和国、ジブチ、エジプト、アラブ首長国連邦、エリトリア、エチオピア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、イスラエル、日本、ヨルダン、クウェート、ネパール、オマーン、パキスタン、フィリピン、カタール、シリア、ソマリア、スーダン、南スーダン、チャド、トーゴ及びイエメンでは、1215-1300MHzの周波数帯は、一次的基礎で固定業務及び移動業務にも分配する。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.330

5.331
   
 付加分配:アルジェリア、ドイツ、サウジアラビア、オーストラリア、オーストリア、バーレーン、ベルギー、ベニン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブラジル、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中華人民共和国、大韓民国、クロアチア、デンマーク、エジプト、アラブ首長国連邦、エストニア、ロシア、フィンランド、フランス、ガーナ、ギリシャ、ギニア、赤道ギニア、ハンガリー、インド、インドネシア、イラン、イラク、アイルランド、イスラエル、ヨルダン、ケニア、クウェート、レソト、ラトビア、レバノン、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、北マケドニア、マダガスカル、マリ、モーリタニア、モンテネグロ、ナイジェリア、ノルウェー、オマーン、パキスタン、オランダ、ポーランド、ポルトガル、カタール、シリア、朝鮮民主主義人民共和国、スロバキア、英国、セルビア、スロベニア、ソマリア、スーダン、南スーダン、スリランカ、南アフリカ共和国、スウェーデン、スイス、タイ、トーゴ、トルコ、ベネズエラ及びベトナムでは、1215-1300MHzの周波数帯は、一次的基礎で無線航行業務にも分配する。
カナダ及びアメリカ合衆国では、1240-1300MHzの周波数帯は、一次的基礎で無線航行業務にも分配し、また、無線航行業務での使用は航空無線航行業務に限る。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.331

5.332
   
 1215-1260MHzの周波数帯では、地球探査衛星業務及び宇宙研究業務の能動宇宙検知器は、無線標定業務、無線航行衛星業務及びその他の一次的基礎で分配された業務に有害な混信を生じさせ、これらの業務からの保護を要求し、また、これらの業務の運用又は発達に制限を課してはならない。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.332

5.335
   
 カナダ及びアメリカ合衆国では、1240-1300MHzの周波数帯において、地球探査衛星業務及び宇宙研究業務の能動宇宙検知器は、航空無線航行業務に混信を生じさせ、この業務からの保護を要求し、また、この業務の運用又は発達に制限を課してはならない。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.335

5.335A
   
 1260-1300MHzの周波数帯では、地球探査衛星業務及び宇宙研究業務の能動宇宙検知器は、無線標定業務及び脚注により一次的基礎で分配されたその他の業務に対して有害な混信を生じさせ、これらの業務からの保護を要求し、また、これらの業務の運用又は発達に制限を課してはならない。

https://www.tele.soumu.go.jp/wari/WarikyakServlet?KYAK=5.335A


5.A91B

周波数帯域1240~1300MHzまたはその一部におけるアマチュアおよびアマチュア衛星業務の運用を認可する主管庁は,
No. 5.29に従って,アマチュアおよびアマチュア衛星業務が無線航行衛星業務(宇宙から地球)の受信機に,有害な干渉を引き起こさないことを保証しなければならない(ITU-R勧告M.2164の最新版を参照).
認可した主管庁は、アマチュアまたはアマチュア衛星業務の局によって引き起こされた有害な干渉の報告を受け取った場合,当該干渉を迅速に排除するために必要なすべての措置を講じるものとする. (WRC-23)

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